昨晩開催されたアカデミー賞授賞式は、長いシーズンを締めくくる晴れ舞台。俳優たちはレッドカーペットで、クラシックなスタイルをとるか、それとも大胆さをアピールするかという選択を迫られます。歴史の重みを感じさせる場だけに、無難な選択肢が選ばれることが多いのですが、今回一風変わった話題を振りまいたのは、映画「Anatomy of a Fall」でブレイクした犬のメッシです。
オスカー像を手にするシアン・マーフィーが着用したのは、ヴェルサーチのシンプルでエレガントなタキシードとオッペンハイマーへのオマージュのブローチ。まさに、クラシックの王道を行くスタイルでした。しかし、数々のミームで人気を博した「Anatomy of a Fall」で主役を務めた犬のメッシは、全く違うアプローチを見せました。なんと、彼は巨大な蝶ネクタイを身に着け、マット・デイモンのハリウッド・ウォーク・オブ・ンピースの星に向かってオシッコをするという、なんともシュールな映像で登場したのです。
最近、レッドカーペットでは蝶ネクタイが再評価されています。ポール・メスカやシアン・マーフィーといった俳優たちが、蝶ネクタイを遊び心たっぷりに取り入れたり、フィービー・ウォラー=ブリッジがGQ Men of the Yearで蝶ネクタイのついたドレスを着用したりと、ジェンダーレスなアイテムとして注目を集めています。さらには、昨年は司会のジミー・キメルが映画『イニシェリン島の Banshees(原題)』の ジェニーというロバのニセモノを登場させましたが、なんとこのロバも蝶ネクタイをしていたのです!
メッシの巨大な蝶ネクタイは、意外にも最新のメンズウェアのトレンドと合致しています。近年、ビッグシルエットやプロポーション遊びがトレンドとなっており、1月に開催されたガバナーズ・ボールでは、コルマン・ドミンゴが大きなサテンの蝶ネクタイを着用し、「大きいことは悪いことではない」という概念を打ち破りました。また、キメルの蝶ネクタイも印象的で、大きさを使ってインパクトを与えていました。一方で、ティモシー・シャラメやオースティン・バトラーのように、細身の蝶ネクタイを選ぶ俳優もいます。
メッシがスーツではなく、巨大な蝶ネクタイだけを身に着けている姿は、映画「Anatomy of a Fall」と同じくらいシュールで実験的です。私たちは自分の目で見たものが本当なのか、真実とは何かを考えさせられます。結局のところ、あのシャレーにいたのはメッシの飼い主であるスヌープだけであり、何が起きたのか本当のことを知っているのは彼だけです。
GQ誌の最近のインタビューで、メッシのトレーナーは、彼が何年も役を探し続けていた「理解されない芸術家」だったと語っています。そして昨夜の授賞式で、メッシは蝶ネクタイというトレンドを切り開き、レッドカーペットのスタイルの歴史に確実にその名を刻みました。今後の出演作については、詳細は不明ですが、フランスの新シリーズに出演するのではないかという噂もあります。
しかし、一部の熱狂的なファンは、メッシは実際には授賞式に出席しておらず、ライアン・ゴズリングがメッシとその蝶ネクタイを見ながら物憂げな表情で拍手をするシーンは事前に収録されたものだと指摘しています。しかし、アカデミー賞授賞式に出席しなくてもAリストのセレブになれるという事実こそが、皮肉にも今のハリウッドを象徴しているのかもしれません。メッシは、冗談の中心人物となり、巨大な蝶ネクタイを脱いで、早々に帰宅してゆっくり休むという、なんともスターらしい振る舞いを見せました。まさに、一礼をして去ったというわけですね。